中毒化する「連帯」と穢れない「化身」

 mixiに書いたので、リンクやタグは未修整です。日曜日に直します。エントリーです。リンクやタグは修正済み。
 土曜は浅草で三社祭なので。

 まずは、はてなで知った『読売』の記事;

携帯ゲーム中毒の主婦、中学生に売春させる
 携帯電話サイトのゲーム代を稼ぐため、知り合いの女子中学生に売春させたとして、警視庁は14日、東京都杉並区高井戸西、主婦慶田花(けだはな)由紀子容疑者(32)を児童福祉法売春防止法違反の容疑で逮捕したと発表した。逮捕は4月28日。

 発表によると、慶田花容疑者は昨年10月、昭島市内のホテルで、知り合いの公立中学3年(当時)の女子生徒(15)に対し、出会い系サイトで見つけた都内在住の中学校教諭(48)と2万円でわいせつな行為をさせた疑い。

 慶田花容疑者は、2万円のうち女子生徒には5000円を渡していた。

 慶田花容疑者は携帯サイトの「グリー」や「モバゲータウン」に熱中し、アバター(分身)や育成ゲームに登場するペットを着飾らせる有料アイテムを大量に購入。ゲーム代が月10万円を超えることもあり、「ゲーム代で生活が苦しかった。女子生徒は若いので客がとれると思った」と供述している。

 女子生徒とは昨年春、都内で偶然、知り合って親しくなり、「小遣いが稼げる」として売春を持ち掛けたという。昨年9月〜今年1月の間に客30人と売春させていたとみられる。女子生徒が今年2月、学校に相談し、事件が発覚した。
(2010年5月14日13時25分 読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100514-OYT1T00582.htm

 これだけの内容だと、ケータイゲームに嵌った主婦が、知り合いの女子生徒に売春をさせて、その利益をピンハネして、それをモバゲーやGreeにカネを突っ込んだ=貢いだとしか思えない。しかも売春を斡旋した主婦と、売春婦として客の相手をした女子生徒との関係は不明のまま。いくら『都内で偶然、知り合って親しくなり」ということがあったとしても、売春の胴元と売春婦としての関係を築くことができるのか疑問が残る。


 次に、同じニュースに関連してmixiニュースの元ネタである『毎日』の記事;

売春周旋容疑:女子生徒にノルマ、32歳女逮捕 警視庁
2010年5月14日 12時46分

 女子中学生に売春させたとして警視庁少年育成課は14日、東京都杉並区高井戸西2、主婦、慶田花(けだはな)由紀子容疑者(32)を売春防止法違反(周旋)と児童福祉法違反=淫行(いんこう)させる行為=容疑で逮捕したと発表した。慶田花容疑者は容疑を認め「キャラクターを育てる携帯電話のゲームに夢中になり料金が月額10万円を超えることがあった。生活が苦しくなり若い子を売春させて支払いに充てようと思った」と供述しているという。

 逮捕容疑は、09年10月18日、昭島市内のホテルで中学3年の女子生徒(当時14歳)を都内の男性中学教諭(48)に2万円で売春させたとしている。女子生徒は21歳と称していたことなどから、教諭は立件されていない。

 慶田花容疑者は女子生徒の友人を通じて知り合って自分の経験を話して誘い、09年9月〜今年1月に約30人と売春させ約40万円を受け取っていた。女子生徒は「手助けしたい気持ちで始めたが月10万円などのノルマを課されるようになった」と話しているという。女子生徒は今年2月に教師に相談、発覚した。【町田徳丈】
http://mainichi.jp/select/today/news/20100514k0000e040052000c.html

 『読売』の記事よりは、主婦と女性生徒との関係が記されている。二人の間には、「偶然の出逢い」ではなく、二人を仲介する人物がいたことが明らかになり、胴元である主婦は「自分の経験を話して誘」ったことになっている。だがこの記事では、主婦が供述した「自分の経験」とはなにかという疑問には答えていない。

 そして、最後に見つけた『産経』の記事(Yahooニュース経由です);

「携帯代の支払い苦しかった」 知人少女に売春させた女逮捕
5月14日12時48分配信 産経新聞
 出会い系サイトで客を募り、当時中学生だった知り合いの少女に売春させていたとして、警視庁少年育成課と昭島署は、児童福祉法違反(淫行)と売春防止法違反(周旋)の疑いで、東京都杉並区高井戸西、飲食店従業員、慶田花(けだはな)由紀子容疑者(32)を逮捕した。

 同課によると、慶田花容疑者は「携帯電話のゲームに夢中になり、携帯電話料金の支払いで生活が苦しかった」と容疑を認めている。慶田花容疑者の携帯電話料金は平均月約8万円、多い月は11万円を超えていたという。

 逮捕容疑は、昨年10月18日午後、都立高校1年の女子生徒(15)を中学教諭の男性(48)に紹介し、昭島市のホテルで、2万円で女子生徒にわいせつな行為をさせたとしている。

 同課によると、慶田花容疑者は当時住んでいたマンションの隣室が女子生徒の友人だったことから、女子生徒とも顔見知りになり、親密になった。その後、女子生徒に自分が生活苦で売春をしていたことをほのめかしたところ、女子生徒が「助けたい」と協力を申し出たという。

 慶田花容疑者は昨年9月〜今年1月までの間、客約30人から計約55万円を売り上げていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100514-00000562-san-soci

 『産経』の記事に1つツッコミを入れると、このニュースで「携帯電話料金」ではなく、あくまでもケータイを通してGreeやモバゲーにアクセスして、そこで課金した料金が桁違いに多くて、生活困難になったということだと思う。今更、ケータイでGreeやモバゲーするユーザーが、パケ放題をしていないとは思えない。
 ただ、3つの記事を並べて、それでも『産経』の記事が一番、丁寧な印象を抱く。主婦と女子生徒は生活空間でかなり身近な場所にいて、ある程度言葉をやりとりする関係だったのだろう。少なくとも主婦が生活苦を理由に「自身が売春している」ことを女子生徒に信じ込ませるほどの会話が行われていたのだから。さらに女子生徒にノルマを課すほどだとすると日常的に、主婦に管理されていたとも読める。「助けたい」という善意の感情による行為から、いつの間にか「労働者」として扱われていたわけでもあるように読める。

 ただ生活苦の原因が、モバイル端末でのゲームにおける、アバターやペット、そしておそらく他のゲームであったことをどれくらい知っていたのかどうかは、これらの記事では判断できない。

 もちろん買春する側の男性たち、ここでは中学教諭が出ているが、売春婦である女子生徒が年齢を偽ったら、立件されないというのはどうなんだろう。

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 さて、今回のエントリーで、真っ先にいろいろ考えたのは、売春を斡旋した主婦であり、ケータイ端末でアクセスしたサイトに嵌り、多額のカネをペット(おそらくGreeクリノッペ)や自身のアバター、そしておそらく他のゲームでの道具などを購入したことについてだった。
 実はワタシもGreeしていました。主に釣りスタとクリノッペをしていましたが、それが原因でパートナーとケンカになったことをキッカケに4月中旬に完全撤退しました。アカウントを削除したので、日記や釣りやペットの記録もすべて削除されています。釣りだと川&海釣りで8段だったので、わりと経験していた方だと思います。クリノッペはあまりしていなかったので、レベルは低かったけれど。
 その経験があるからかもしれないのですが、ケータイ端末のゲームに多額のカネを注ぎ込んでいる人、一日中何かしらのゲームにアクセスしている人は多く見ました。しかもGreeだけじゃなく、ハンゲーム、モバゲーと一日中ケータイの画面とにらめっこ状態なんて人もいますし、特定のゲームにのみ集中している人もいました。
 その時のことを思い出すと、ケータイ端末の中のゲームになぜ多額のカネと、長時間を突っ込んで、やり続けられるのかということを何となくですが、感じられるのも事実なのです。
 今年に入ってからGreeのゲームをしていて、異様だなぁと思ったことは、ゲームの仲間を増やすこと、このことを1つのクリアの要素としたことがありました。釣りにしろ、探検にしろ、クリノッペにしろ、毎週行われるイベントや大会では、チームを作ること、協力プレイをする仲間を以下にたくさん集めさせることが、ゲームをすることいかに求められてくる。
 釣りだと、釣りバトルや釣り大会では、初心者を集めて、いかに貢献できるかでポイントやプレゼントがつき、釣りツアーでは大勢の仲間を集めて課題となるアイテムの数を競う。
 ここでは1つの事例として釣りスタをあげましたが、これがクリノッペや探検、ハコニワと4大ゲームで同時進行で行われ、登録していないゲームに関して初心者だと判断されたら、ツアーのメダルを贈って、ゲームに勧誘して、友だちになるなんてことは毎日のことでした。しかも1つ1つのゲームで、ある課題をクリアすれば、それをすぐさま日記にしてコメントを求めるようなやり方だったので、個々のユーザーのホームページは、友だちの課題達成情報がツィッター画面のようにならび(ワタシはツィッターしたことないですけれど)、そこでもコメントやレスのやりとりをしなければならなくなるのです。もちろんほとんど更新情報についてはスルーすることも可能ですが、誰かがひとことコメントをし、レスを返さなければ、それでまた心配されるというやりとりがずっと続き、ワタシの場合ですと、クリノッペ友だちにアクセスし、ペットのクリノッペを突いたら挨拶、そしてご褒美をかき集めるというのが朝の日課になるほどでした。
 その間にも釣りツアーや探検ツアーのチケットは矢継ぎ早に届き、それに参加するかしないかも表明しないと、友だちから心配されることの繰り返しでした。
 それらのやりとりは、自分自身がとても大切にされているなぁと思う反面、こちらがコメントをしたのにレスがないとなると、即座に切断することもされることも可能であるという「連帯」だったのです。クリノッペや釣りなど、特定のテーマに特化し、個々のユーザーはアバターとハンドルネームの向こう側で、でも日本のどこかに確実に存在する他者との関係、それを個人的には「連帯」と呼べるようなものだと思っています。ただし、その「連帯」は異様なほど中毒性を内包して、そのゲームの世界から降りること=離脱することをなかなか許さない。
 Greeの場合ですと、TVCFでは「無料」と謳っていますが、「無料」だったらGreeの社長がアジア地域の長者番付に名前を連ねることもないわけで、実際にプレイすればわかりますが、あれこれ手を変え品を変えて、ユーザーから金を取ることに躍起です。しかも露骨過ぎるのが馬鹿正直ですが、それが通用するのもまた不思議。
 1500万人のGreeユーザーの一部が、今回のように大量のカネと時間を費やして、ケータイ端末の中のゲームの世界でのみの賞賛を集めようとする消費者の集積の一部が、今回露見しただけなのかなぁと思うのです。

 そしてその世界で賞賛を浴びる「私」となる「化身」もまた、大量のカネを投資すれば、ユーザー個々人の身体を操作するよりもより簡単に素早く、美しくなることができる。もちろんクリノッペなどのペットも同様。
 その「化身」ができあがるためにかけられたカネや労力はまったく反映されずに、永遠にその姿を穢されずに残される。

 このニュースを見て、幾つかの記事を探しているときにやっぱり思い出したのは、ワタシ自身がGreeを辞めるとき=改心したときに思ったことで、個々のゲームを一人きりでやっていたら、ここまでカネを突っ込んだりしないはずであり、突っ込むための理由は個々のケータイゲームやペット育成ではなく、それを一緒に楽しんでいて、同じように中毒性を帯びたユーザーの中での、自分の位置や地位を確保したいということなのではないだろうかと思う。
 釣りスタの旬魚ツアーなど、11時スタートで、12時にはコンプリート達成者が出て、14時には攻略法が情報交換掲示板に載るような世界において、ケータイ端末の中の話だけに閉じこめておいては、おそらくこの現象は理解できなくて、ケータイ端末をもって何らかのサイトにアクセスしている時点で、中毒化する「連帯」の一部に関与しているのだと思った方がいいし、mixiアプリでも同じような構図は散見されるだろう。
 その上で、ヴァーチャルな人間関係ということではなく、個々のユーザーにとっては、職場や家族、サークルなどでの人間関係と同じように、若しくはそれ以上の関係をGreeやモバゲー、ハンゲームなどで構築していることも理解しておかなければ、売春を斡旋した主婦が多額のカネと大量の時間を費やして、見つけようとしたものがわからないままだと思う。
 

 ということを書いておきながら、中毒化する「連帯」の一部をワタシ自身も抜け出せずに、サンシャイン牧場とハッピーアクアリウムはするのですが。

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